出口なきアベノミクスと肝腎のコロナ対策
志村けんさんのバカ殿様が大好きでした。優しいまなざしと大真面目なおとぼけ。彼の死に多くの国民が落胆しました。
志村さんのみならず、コロナで命を落とすことになってしまったご本人の思いはもとより、関係者の皆さまにとって、大切な人を看取れず、また見送ることもままならず、お骨となって帰ってくる。言葉にならない喪失感。まさにこれはコロナ感染症との戦争だと思います。
ワクチン開発や特効薬が出来るまでは、いかに感染を抑えるのか、そこが一番大切です。
そのために、人の移動や人との接触、あるいは感染の可能性のある行動を、可能な限り少なくすることが大切として、安倍政権は緊急事態宣言を行い、様々な活動の自粛を求めています。
そして、安倍政権は緊急事態宣言の下、ようやく「事業規模」108兆円の緊急経済対策を組みました。しかし、この中で、現在(4/16時点)示されている補正予算案の直接のコロナ対策は、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費」のわずか16兆7058億円です。財源は全額、国債(国の借金)です。一刻の猶予なき生活困窮世帯に対する新給付金には、たったの4兆206億円。事業者の資金繰り対策や感染拡大対策や医療体制の整備などを入れても12兆4404億円でしかないのです。この他は、感染が落ち着いた後の経済対策です。
響きは、確かに日本の新年度予算102兆円を超えますが、対策によって影響の出る金額をすべて織り込んだものとなっています。例えば、これから徴収猶予される税金の金額も加味されているという事です。コロナ対策に関係ないものも含んでの「事業規模」108兆円なのです。規模感だけは、国民へのアピールとして大きく映し出されます。
私達は、政府の協力要請を受け、外出自粛や、自営業の皆様には、自らの生活の糧を手放す営業自粛や、客足の低下に耐え、また子ども達を守る休校の取り組みに、多くの日常生活への影響も受けています。
出口の見えない対策に、不安と共に懸命な思いで生活を送っています。 取り沙汰された、生活保障の給付金制度の1世帯30万円も、収入要件によって困っている人がはじかれ、結局どこに照準があるのかも分からない提案でした。
今回ようやく新たに、1人10万円や、中小企業へ200万円、個人事業主へ100万円等、貸付でない給付という枠組みが示されました。しかしどう考えても、まだまだまったく不充分な手立てです。
本来ならこういう時にこそ、財源に国債を出し惜しみなく発行し、収入が下がる従業員などすべての労働者や、事業存続に塗炭の苦しみにある事業者に対し、素早く、分厚い支えを社会全体に敷くことで、初めて「コロナ終息に向け、人の接触を少なくする社会づくり」を支えることが出来るのです。
日頃からの財政再建が進んでいれば、実はもっと大胆かつ安全に赤字国債を発行することによって、より力強く国民の生活を支えるため、あるいは各方面の経済や事業者を守る為、更なる大盤振る舞いも可能なはずと思います。
にもかかわらず、既に日銀は、2013年より「アベノミクスの金融緩和」で、円安を狙い、政府の発行する国債を、市場において年平均で見ると、50兆円超を爆買いし、市場に流通する貨幣を、アベノミクス前の138兆円から現在の516兆円(今年1月時)まで、異次元に増やし続けて来ています。
日頃アベノミクスの成果を喧伝するために、実は禁じ手の、これらの実質的な日銀による国債の買いオペによる円の市場供給や、大切な厚生年金や国民年金などの積立金を使って、株価の高値を作り出す操作や、はたまた日銀によるETF(上場投資信託)の資金投入という名の相場買い支えなどを日常的に行って来ているが故に、この緊急事態に際して、本当に必要な、国民を支えなければならない今、機動的で強力な手が打てない実態ではないか、私はそう思います。
これらの政策を打ちながら、肝心要の、本当に国民が国の支援を必要とする今この時に、政府がわずか 16兆円程度の国債発行しか行わないとするなら、まさしく、この中途半端なコロナ対策も、出口なきアベノミクス(アベノミクスを止めた途端、円は暴落し株価も下がる危険性)の弊害と言わざるを得ません。
自らの政権延命のために、国民の命よりも、アベノミクスの元での今後の実体経済の混乱を心配し、緊急事態宣言など、すべての対応が後手後手に回り、大胆な手が速やかに打てない、安倍自民党政権の姿が垣間見えます。
あるいはまた、補正予算を小出しにして国民の期待をつなぎとめ、自らの政権延命につなげようとするなら、まさに許されることではありません。これが杞憂であって欲しいと心から願います。
まず、国民の、命と健康、日常の生活を、何としても守る。私はこれこそがまっとうな政治だと思います。
伊賀 央